第1部:不正の温床は、こうして生まれる
このセクションでは、組織内で不正がどのように発生し、なぜ人々がそれに加担してしまうのかについて、心理学の理論を用いて深く掘り下げていきます。
みなさんは、上司からの法令違反の指示に直面したことはないですか?
その時、断れますか?
私は、そう簡単には断れません。
どうして人は、違法とわかっていても、その指示に従ってしまうのですか?
その問いはとても重要です。では、直面した時に知っておきたい心理学の理論を、15個紹介していきましょう。
1. 不正のトライアングル理論
1つ目の理論は「不正のトライアングル理論」です。
この理論は、アメリカの犯罪学者ドナルド・クレッシーがもとを作り、後にアルブレヒトが体系化しました。
この理論、人がなぜ不正に手を染めるのか──
その根底にある心理状態や環境要因を、3つの要素で説明するモデルですね?
ええ。その3つとは、「動機」「機会」「正当化」。
たとえば、強いプレッシャー(動機)があって、不正が実行可能な立場や環境にあり(機会)、
しかも「これは仕方ないことだ」と自分に言い訳できる(正当化)環境が揃うと──
人は、自分を“被害者”であるかのように錯覚することもあって“加害者”とは思わずに法令違反に加担してしまう・・・
ええ。だからこそ、「これは違法かも?」と気づいたとき、自分が今どの三角に引き込まれているのかを見つめ直すことが大切なんです。
見つめ直すことができなければ、気づかぬうちに“不正の三角形”の中に入り込んでしまう…
2. 同調圧力と服従
2つ目の理論は──「同調圧力と服従」です。
これは社会心理学で非常に有名なテーマなんです。
人は、周囲の集団に合わせたいという無意識の欲求から、個人の判断を曲げることがあります。
つまり、自分の意志よりも「空気」に従う心理があると?
はい。ソロモン・アッシュの同調実験や、スタンレー・ミルグラムの服従実験が有名です。
特にミルグラム実験では、被験者が命令に従って“危険な電気ショック”を他人に与える場面が観察されました。
怖いのは、“ごく普通の人”だからこそ、命令に従ってしまうという事実で、私は思い当たるところ自身も他人もありまくりです。
それなんです。
職場でも「皆がやっている」「上司の命令だから」というだけで、違法行為に同調する危険があります。
同調圧力を“人間関係の潤滑油”にするか“加害の導火線”にするか──組織の存続に関わりかねない重要な分かれ道になりますね。
この理論は、他人事ではなく、私たちの日常の選択にも関わってくるものです。
深いな・・・
AIさん、3つ目の理論も、お願いします。
3. 傍観者効果
3つ目の理論は──「傍観者効果」です。
心理学の古典的な理論の一つですね。
はい。「傍観者効果」とは、事件やトラブルの現場に居合わせたときに、周囲に他の人がいるほど、自分は何もしない傾向が強まるという心理現象です。
これは1960年代に、ラタネとダーリーという心理学者がニューヨークの事件を契機に研究し、実験によって明らかにしました。
ああ…たとえば職場で、誰かが理不尽なパワハラを受けてるのを見たとしても、「他にも見てる人がいるし、誰かが止めるだろう」って、つい他人任せになってしまうってことですね?
そうです。しかも人数が多いほど「責任の拡散」が起き、誰も動かなくなる傾向があります。
これは組織内の不正においても非常に危険で、誰も声を上げず、結果的に不正が黙認される構造になってしまうんです。
これ、まさに“空気”との戦いですよね。
“沈黙は金”じゃない。“沈黙は加担”になりかねない──これは覚えておきたい言葉ですね
おっしゃる通りです。傍観者であることは、時に加害の一部になることがあります。
だからこそ、この理論を知っておくことが「いざという時の行動力」につながるんです。
行動って、“正しさ”というより“勇気”に近いのかもしれないですね。
でも、それをわかっていても、私には自信が今一つ持てないです…
その“揺れ”こそ、人間らしさでもあります。
だからこそ、「責任の拡散理論」にも関わる──次は第2部「責任転嫁と権威への服従」から紹介します。